I Can | どうでもいい話

I Can

またやってしまいました…。なにを? 最初に“”がついて、最後が”“で終わるものです。

そうです「クンフー」です。この間なんて一人で山小屋に閉じこもって呼吸法をマスターして…冗談です。

そうです「クーデター」です。みんなで力を合わせて教授室のドアを木工用ボンドで固定しました。けれどドアはスチール製で…はい、いい加減にしておきます。

そうです「クレーンキャッチャー」です。今度は本当です。そして狙っていたのはまたしても「リラックマ」です。

しかし、今回はぬいぐるみではございません。なんと、ブランケットです。正確に申しますと、「ブランケットが中に入った頭部のぬいぐるみ」です。ええそうですとも、結局ぬいぐるみです。まあそんなことはいいじゃないですか。

僕たちはお気に入りのゲームセンターに行きました。仙台市街の広瀬通と定禅寺通りを結ぶアーケードにそれはあります。別のお店もいろいろやってみたのですが、他店に比べそこの店のアームは力が強いのです。

そこで僕たちは「ブランケット」を見つけたのです。浮き足立ちました。なんせそれを取ることができれば、これから毎晩リラックマにくるまって眠ることができるのです。良識ある人にとってはどうでもいいことかもしれませんが、少なくとも僕たちにとっては重大でした。あ、ちなみに「僕たち」というのは、僕とS嬢です。

僕は根性なしなので、欲しいものがあるとまず店員さんを呼びます。そして取りやすい位置に変えてもらうのです。しかし、それには当たりハズレがあるのです。店員さんによって「甘さ」が違うからです。

僕が最初に呼んだのは、女性の店員さんでした。彼女は嫌な顔ひとつせず「ブランケット」を動かしてくれました。

そしてトライ、and I’ve tried, and I’ve tried…I can’t get no!The Rolling Stones “Satisfaction”より

2、3回やっても取れなかったのでもう一度店員さんを呼びました。今度は大柄な男性の店員、そして彼はビニールでできたクワガタムシの帽子をかぶっていました。僕が取れない旨を伝えると、彼は一言こう放ちました。

「あ、これは取れますよ! うーん…うん! 取れますって!」

少なくとも僕が聞きたいのはそんな台詞ではありませんでした。

「君が取れると思おうが思わないが、そんなことは関係ない。問題は僕が取れないことであって、もうすでに1000円使ってしまったことなんだ」

そんな言葉が僕の頭の中を支配していました。とりあえずもう一度やってみましたが、だめでした。大きな網を持ってきてクワガタの男を捕まえたい、いやむしろ柄のほうでひっぱたきたい衝動にかられました。

「どうですか~調子は~?」

沈みかかった僕たちの気分は、少し離れたところから聞こえるその言葉で浮き上がりました。そう、最初僕が呼んだ女性の店員さんが来てくれたのです。

「取れないんですよ」と情けなく僕が言うと、彼女はにっこり笑って「ブランケット」を半分穴に落ちそうなところに置いてくれました。もちろん次の挑戦は最後の挑戦となり、「ブランケット」は僕たちのものとなったのです。

そして彼女に何度もお礼を言い、クワガタには目もくれず店をあとにしました。

仙台のクレーンキャッチャー愛好家皆様へ教訓。

「クワガタには気をつけろ、もしかするとカブトにも変装しているかもしれない。それも気をつけろ」